終わらない夏の謌

作詞・作曲・アレンジ:FMIC7743/渦音P
歌唱:ボーカル:渦音ヒトvs歌手音ピコ [Haunted-United-Procedure]
「おわらないなつのうた」と読みます。BPMは前半が135で後半が90-180です。
「有耶無耶の境界」 / 「終わらない夏の謌」 / 「かんなぎやま」

SoundCloud

FMIC7743 · 終わらない夏の謌

「概念連謌の共鳴神話学」(BOOTHへのリンクです)

ちょっとまってね

歌詞

やどるべきみずも いまはとじられ
したからうえに さがるものかな

「今宵の月はなかぞらにあり」

夏の日の終りに狂い咲く藤の花
ありえざる葉月の晦日に芽吹く藤波
瑞兆か、凶兆か 占うは呱々[ここ]の声
新たなる覡は中天[なかぞら]の月を指す

祀りを司る、"かみなりむらのおかんなぎ"
御神体と概ね同義の箱入り娘
厨子の向こうに仕舞われて神の声を見て聞いて
覡の娘はきょうもお告げの謌をくちずさむ

生と死の別れ道は帰る路なく一方通行
それでも人の歴史は語り継がれ残るもの
かみなりむらに行きたいなら、神社の脇から山に入り
山道[さんどう]追分[おいわけ]見守る地蔵様が道しるべ

(わらべうた「かんなぎやま」)
「"昔話"はここで終わりますが、村の歴史は続きます。」

夏の夜の終りに狂い咲く彼岸花
燃え盛る葉月の晦日、扇動されし烏合
守るべき掟、しきたり、それがまやかしだとしたら?
膨れ上がる疑心暗鬼煽り立てる"やまのおに"

古くからうたわれる子供等のわらべうたに
織り込まれる警鐘は時の流れと共に薄れ
それでも災厄を封じ、禁足の域を守る
血脈に受け継がれる覡のお役目

たとえ徒花だとしても

根も葉も茎もなく浮世離れた蕊を持たぬ藤の花 宿るべき水もなく
たとえその身は焼け落ちて白灰[しらばい]となろうとも
燃え残る伝承歌[ものがたり]を熾火に、言の葉を束ね上げ《ものがたり》の花を

時は流れ、故郷[ふるさと]の面影も今はなく
街の名前も境界線も知らないうちに入れ替わる
かつての若木は樹梢[こずえ]を天に伸ばさんばかりに背を伸ばし
お地蔵様も[いわお]となり、しかし風の色は同じ

神社の脇からお山に入り、かつての村と[やしろ]は跡形もなく
どういうわけか禁足地の要石も無い

過去があって現在[いま]がある、そして未来は変えられる、と
故郷の跡を見下ろし、客人[まれびと]はくちずさむ。
【もはやこの地に根を下ろすことも、種蒔くこともない身の上。
旅から旅の浮草なれど、為すべきことを成すために。】

たとえ人の目に触れずとも、神はいつでも人と共に
お天道様が全てを見ている、ゆめゆめ忘れることなかれ

【語り継げ、書き記せ、物語はここにあり。】
覡は朗々と謌いあげる、黄昏を背に受けて
【それは鬼でも魔でもなく、だれにでもある人の弱さ。】
語り部が紡ぐ言霊が象る、伝奇[ものがたり]の再定義

語り納めの套言[とうげん]と共に、ばけものたいじは果たされた。
【よかったですね。どっとはらい。】

終わらない夏の日に狂い咲け千紫万紅
謌い継がれる限り旅路は続くだろう
いつかどこかでだれかがくちずさむ
どこかでだれかにきいた 夏の日のものがたり

終わらない夏の謌を

登場人とか物紹介

過去の話
現在の話
その他

また8月生まれが増えてる……。(8/11渦音さん 8/18山上下夏一さん 8/21insc a.k.a.悪戸兼子 8/32"伝道師の青年"a.k.a.■■■■)

用語集

「宿るべき水は氷にとざされて 今宵の月はなかぞらにあり」
「藤棚の水に映りし花のかげ 下から上に下がるものかな」
幽霊と連歌を詠む怪談からの引用です。
前者は手元に本があるんですが(『東北の伝奇』畠山弘 著)、後者はどこから出てきたっけな……図書館のどこかにあったような

呱々の声 赤ちゃんの泣き声、産声
謌 歌の異体字
藤の花 5月~6月の初夏に花が咲きます
彼岸花 9月末~10月ごろに花が咲きます
套言(とうげん) よくある決り文句、使い古された言葉、常套句
どっとはらい "めでたしめでたし"に類する、締めのことば。
ちなみにこれは南部弁で、津軽弁では「とっつぱれ」といいます。語呂で選んだ。

補遺

「青年と少女、伝道師とかみさま」
少女の姿をした得体の知れない神と、青年の姿をした胡散臭い覡による 旅と信仰と物語蒐集とたまに悪霊祓いの胡乱怪奇田舎伝奇譚。
シリーズは一区切りですが、彼らの旅は続きます。

メタ的に言うと「本編」に相当する小説の更新がまだ残っています。
動画内にも断片的に使っていますが、どちらかといえば装飾としての要素が強いので今はまだ読み流していただいても……