花鳥兜に蛍飛ぶ - 歌謡サスペンス劇場「胡乱探偵歌川緋徒里の事件記録」より

作詞・作曲・編曲・原作・その他雑用:FMIC7743/渦音P
ボーカル:歌手音ピコ(VOCALOID)
「故郷の風に揺れる花の名前を忘れたとは言わせない」

「はなとりかぶとにほたるとぶ」と読みます。歌謡サスペンス劇場以下の部分はサブタイトルです。

もるふさんのお誕生日!即ちMorph EP5!今年の「Maze of the Weirdland」は変拍子がテーマの激ヤバコンピレーション!!ページ最下部の「DOWNLOAD」からダウンロードできます!!
今回は公式サイト側に楽曲コメント欄が無い&EP参加楽曲で初の歌ものになったので歌詞カードをご用意しました。

歌詞

変拍子の曲なので歌詞カードを色分けしています。凡例……
●3/8 ●5/8 ●6/8
●7/8 ●9/8 ●10/8
●13/8
(その他)

[BPM=105]
(イントロ)
夕暮れの空 赤き日に沈む
在りし日の記憶は遠き日の幻
故郷ふるさとの朧気な記憶

風にのって童歌わらべうた聞こえ

青く光る夏の十三夜
朧月の下を蛍が舞い飛ぶ
燐光が照らすとりかぶとの花
蛍火の軌跡が旋律を紡ぐ

 (間奏1小節)
病葉わくらば沈む苦い水の淵揺蕩う腐草ふそう蛍となる
記憶の底浚う歌声は

手折られし花に捧ぐ挽歌

[BPM=186][4/5→13/4→4/5→6/4]【童謡「とりかぶと」作詞・作曲 不詳】

[BPM=110]
遠き山に人の名を呼べど帰らぬ影は薄暮はくぼの中
深淵に灯る恩讐の鬼火は

果たすことのない夢想の燐光ひかり

届かない過去を悔いるのはもう止めた、禍福は糾える縄の如し
お仕着せの憐れみも口だけの贖罪も欠片も響かない、毒にしかならな

 (間奏8小節)(間奏4小節)(間奏1小節)
故郷の沈む山の人造湖、水面に映るは逆さ藤の花
根も葉もなく浮世離れした歌声を手繰り寄せ導かれし客人まれびと
か細い幽冥の声を掬い上げ、

眩惑の蛍光ほたるびを燈火に変える

悪弊滲む甘い水を吸い、犯した罪の呵責もない
花を踏み躙り、地に伏した虫を省みることもなかっただろう
お前達の内に宿る罪、全ては因果の赴く
ままに

在りし日の花の幻影かげに怯える罪人が虚栄の暗幕に風穴を開ける
忘却の彼方に沈めたはずなのに、どうして今になって浮かび上がる
白黒つけない灰色の立ち位置は酌量科すための言い訳にもならず

「お前達を裁くのは自らに宿る罪」


故郷の風に揺れる
花の名前を
忘れたとは言わせない

「許されると思うな」

 (間奏9小節)
夏暁なつあけの空 紅掛の空色
在りし日の記憶は遠き日の幻
「見てごらん、ほら綺麗な花だね」と

菫色の花の里、蛍が飛ぶ

【童謡「とりかぶと」作詞・作曲 不詳】

[BPM=124 4/5] 1) 夕暮れの空 赤い雲の下
風に揺れる紫色の花
見てごらん、ほら綺麗な花だね と
姉さまがころころと笑うよ
2) お里の山 赤紫色
風に揺れるとりかぶとの花
美しい花、だけど危ない と
大黒様が言っていたよ

登場人とか物

童謡「とりかぶと」

「とりかぶと」とは、童謡の一つである。作詞・作曲者は不詳。
概要
■■県藤花市一円で古くから手遊び歌として歌われていた童謡である。
2000年代前半頃まで、藤花市寿地区周辺で夕方17時に放送される防災チャイム音楽として採用されていた。防災無線機器が新調されて以降「遠き山に日は落ちて」に変更されている。

登場人物紹介


歌川 緋徒里[うたがわ ひとり]
探偵事務所をひらく怪しい青年。年齢不詳。男性。
 胡乱探偵なので死者の霊が見えたり残留思念を追ったりと割と「探偵」としてはチートの部類。
助手[じょしゅ]
ある事件で助けられたことをきっかけに「助手」として歌川探偵事務所に押しかけてきた女子高生。
依頼人[じょしゅのともだち]
助手の同級生。よく探偵事務所に顔を出してだべっている。作曲家「hotaru」の強火のファン。
四方木 蛍[よもぎ けい]
1988年(昭和63年)生まれ、2017年3月現在28歳。
男性。一人称は「私」。花屋店員兼インディーズ作曲家。インターネット上に「hotaru」名義で楽曲を発表している。
 乳児期に母(病死)と、小学生の頃に姉(事故死扱い)と死別。姉と同時に父が行方不明(失踪宣告が出ており、死亡扱い)になった為、四方木夫妻の養子となっている。旧姓は烏頭柾[うずまさ]。
過去の事はよほど親密になった人間にしか話さないため、中高の同級生も知らない。
 姉を結果として死に追い込んだ人物は許さないが、自分がどうこうできるものでもない(物証もないし事件そのものが10年以上前のことなので)ので一定の諦めが付いている。それはそれとして、そいつらが勝手に苦しんで死んでいてほしいとは思っていた。
 毎年夏になると人知れず新藤花ダムを訪れている。
烏頭柾 菫[うずまさ すみれ]
蛍の姉。3歳年上。享年14。事故死扱いとなっているが、真相は不明。
 山中で足を滑らせて転落。事故死であることに間違いはないが、それはそれとして強い未練を抱えていたため残留思念が霊として残っていた。
 自分の預かり知らぬところでいじめの主犯格/間接的な死因となった人物たちが勝手に殺し合っていたのは釈然としないが、蛍はそんなに気に病んでなさそうなのでヨシ!
 と言いつつ胡乱探偵の手を借りて呉井に恨み言をぶつけに行くなど意外とアグレッシブ。
烏頭/菫(トリカブト)、蓬
烏頭柾夫妻[うずまさ-]
菫・蛍の両親。母は蛍が物心つく前に病死、父は蛍が小学6年生のときに行方不明になった。両方とも旧福寿村出身。
四方木夫妻[よもぎ-]
蛍から見た叔母(父親の妹)とその夫。幼馴染で、妻の兄(蛍の父)とも長い付き合い。
実子はおらず、情緒不安定だった蛍の精神的支柱となっていた。現在も峠市在住。

被害者A 黒堺 栄太郎[クロサカイ エイタロウ] (31)
ガキ大将がそのまま大きくなったタイプ。体もデカく声もデカいが気は小さい。黒坂建設の3代目の長男。セクハラ・パワハラ常習と素行はあまりよくないし、今の所役職はないがまあどうせこいつが次の社長になるんだろうなと思われている。元々金蔵から不審火が出るタイプの成金業者ではあるんですが……。男性。
 中学時代に菫をいじめていた・間接的な死因となった暴行の主犯。本人が菫の、弟(米次郎[ベイジロウ])が蛍の同級生。
 Q.名字は「黒堺」で「黒坂建設」?
 A.素で間違えました 旧黒堺建設と○坂建設の合併的な……

被害者B 呉井 真純[クレイ マスミ] (31)
腰ぎんちゃく気質。罪の意識をずっと抱えていた。女性。菫の事件については「ちょっと脅すつもりで呼び出したが、黒坂(と白岬)がどんどんエスカレートして、止めたら自分までやられそうだった」のである意味では被害者。
被害者C 白岬 繁和[シラサキ シゲカズ] (31)
日和見気質。男性。親が黒坂建設で働いており、後に自分も系列企業に就職している。

地名

■■県藤花市[とうかし]
県内陸部に位置する、それなりに規模がでかい地方都市。

藤花市寿地区[ことぶきちく]
旧福寿村からの移住者が多く住んでいた地区。(仮称)新藤花ダム建設の数年前から黒坂組(後に工事を請け負う建設業者、黒坂建設の関連会社)の関係者が移り住んでいた。
ダムの建設に伴って全世帯が立ち退いており、その大半は公営住宅「ことぶき住宅」に移住している

峠市[とうげし]
藤花市よりも規模の大きな都市。山を隔てて隣接する。

福寿[ふくじゅ]村・坂井[さかい]村・久井[くれい]村・三先[みさき]村
山間部にあった村々。昭和**年に全域が藤花ダムの底に沈んでおり、全て現在の藤花市にあたる。蛍の父親が福寿村の出身。

藤花ダム[とうか-]
藤川[ふじかわ]流域の治水を目的として建設された。昭和**年竣工。

新藤花ダム[しんとうか-](愛称:藤見湖[ふじみこ])
治水能力の向上を目的として建設された。旧藤花ダムがまるごと水没しており、真夏の貯水量が減るごく短い時期に遺構が現れる。

藤見湖ダムパーク
親水公園。童謡「とりかぶと」の碑が移設されている。

バックストーリーのざっくりしたあらすじ

過去

  1. 蛍の父親を中心にダム建設反対運動が起こるが、次第に下火になり末期には蛍の父親一人で活動していた。その影響で家全体が村八分状態で蛍と菫も学校でいじめられていた。ダム建設が決まり、集落の移転先として用意されていた住宅ではなく父親の妹が暮らしている「峠市」に引っ越すことに。蛍が小学6年生の、菫が中学2年生の1学期末で転校することになった。
  2. 終業式が終わって家に戻った蛍。そこに暴力をふるわれたらしい傷を追った菫が帰ってくる。錯乱状態の菫が家を飛び出し、父親はそれを探しに行くが夜になっても戻ってこない。翌朝の早朝、山中で菫の遺体が見つかる。父親はそのまま行方不明、7年後に失踪宣告が出される。
  3. 蛍、父親の妹夫婦に引き取られて姓が変わり四方木蛍になる。なんやかんや情緒も安定し、高校時代は軽音楽部(ギター・同期オケ打ち込み)に所属する等していた。

現在(本編時系列よりちょっと前)

  1. 蛍、花屋店員兼DTMerになる。「hotaru」名義で楽曲を公開し、そのうちの一曲「violet vengence」がバズる。楽曲と共に謎解き要素(タイトルの元ネタ等)を入れるのが恒例だったが、今回の「メロディの元になった童謡」は『とりかぶと』の知名度が低かったため正解者が出ていなかった。
  2. 菫の同級生たちの同窓会が開かれる。その中には当時菫をいじめていた主犯格だった3人も参加していた。居酒屋店内の有線放送で流れていた「violet vengence」のメロディが『とりかぶと』のパクリ引用である(実質的な正解者第一号)ことを当て、それをきっかけに中学生時代の話になる。
  3. 菫は事故死か自殺か、誰が悪いのか、俺は悪くない奴が勝手に死んだ等言い争っているうちにもみ合いとなって黒堺が白岬を突き飛ばし、当たりどころが悪く死亡。カネ目当ての強盗に偽装するため財布を抜き取り遺体を損壊する(『藤花市死体遺棄事件』)
  4. 呉井は付き合わされただけなのだが、黒堺は呉井に罪を被せようとする。もちろん一度は拒否するが黒堺から"口止め料"として金銭を要求されるようになり、それに耐えかねて殺害。(『藤花市河川敷殺人事件』)

現在(本編時系列)

  1. 歌川探偵事務所に「violet vengenceの元ネタを調べてほしい」という依頼が入る。依頼というか、"助手"とその友人の雑談の流れで調べることになったというか……。
  2. 他の楽曲がいずれもわらべうたのサンプリングであるところからあたりをつけ、『とりかぶと』に行き着く。歌詞に出てくる"だいこくさま(大黒様)"を祀っているとみられる藤花大黒神社へ足を運び、そこで蛍に出会う。蛍=hotaruであることを見抜き、元ネタ当てクイズの正解者第一号であると告げられる。その帰り際、探偵が「"菫"の幽霊」と出会い過去の事件について――自分自身の死因は事故だが、それはそれとして自分たちをいじめていた人物がその後どうなったのか――知りたい、と探偵に依頼をする。ここで藤花市で発生した2つの事件と繋がる。
  3. 探偵が『藤花市河川敷殺人事件』の容疑者(正当防衛を主張)として勾留されている呉井に面会。口寄せの要領で"菫"のことばを告げる。
     菫「許されると思うな」
    当初、呉井は「金銭トラブルで口論になって、襲いかかってきたので必死に抵抗した。」とあくまで不可抗力だとを主張していた。しかし、"探偵"が面会に訪れて以降供述を一変。事実を全て正直に話し、さらに『十数年前の事件』についても供述。
  4. 探偵と蛍が再会、一連の結果と菫のことを蛍に伝える。死人が出ているためスッキリ解決とは言いがたいが、一つの区切りということでこれからもやっていこうという感じに。菫が守護霊的な感じで蛍についていくことに。